トラック運転手の給料のカラクリ|求人票の「月給35万円」の中身を経営者が解説
※金額はあくまで一般的な目安です。実際の条件は企業・地域・車格により大きく異なります。
地方でトラック運送会社を経営しています。ドライバーを20名ほど雇っています。
今日は、給料を出している側から見た「運送業の給料の仕組み」を書きます。
求人票の金額だけを見て入社して、「思っていたのと違う」となる方が本当に多いです。それは会社が全部悪いわけではなく、給料の構造が分かりにくいからでもあります。
その構造を、包み隠さず説明します。
運送業の給料は「3層構造」です
まず、これだけ覚えてください。運送業の給料は、おおむねこう分かれています。
- ① 基本給(給与の基礎となる部分。欠勤などによる控除は別途確認)
- ② 歩合・運行手当(走った距離、運んだ量、行った回数で変わる)
- ③ 各種手当・残業代(無事故手当、皆勤手当、時間外など)
求人票の月給には、基本給に加えて歩合・手当・固定残業代が含まれる場合があります。総額だけでなく、何が含まれているかを確認してください。「35万円〜」という表記だけで、最大額とは判断できません。
実際の内訳の例(イメージ)
| 内訳 | 金額 | どういうお金か |
|---|---|---|
| 基本給 | 18万円 | 給与の基礎となる部分。欠勤時の扱いも確認 |
| 歩合・運行手当 | 10万円 | 走った距離・運んだ量で変わる。減る月もある |
| 残業代 | 7万円 | 働いた時間しだい。忙しくなければ出ない |
| 合計 | 35万円 | これが求人票に載る数字 |
この場合、「たくさん走って、たくさん残業して、やっと35万円」ということです。
そして、走れない月・忙しくない月は、18万円に近づきます。だから基本給を見てください。
なぜ基本給が低いのか(会社側の事情)
「基本給を上げてくれればいいのに」と思いますよね。正直に理由を書きます。
運送業の売上は、荷物の量に完全に左右されます。景気が悪くなれば荷物は減ります。荷主が契約を切れば、その分の売上はゼロになります。
基本給を高くすると、荷物が減った月でも同じ額を払い続けなければならず、会社が持ちません。だから歩合の割合を大きくして、変動に耐えられるようにしています。
これは業界の構造上の問題で、多くの会社が同じです。
そして、理由はもうひとつあります。基本給が上がると、残業代と休日出勤の単価も上がる——だから会社は基本給を抑えたい。この話は求人票41件を調べた記事で詳しく白状しました。基本給の記載は、Aサイトが26件中3件、Bサイトが15件中9件でした。
だからこそ「基本給がいくらか」を確認してください。ただし、欠勤や休職の際にそのまま支払われるとは限りません。休んだときの給与の扱いも確認が必要です。
手当の中身(よくあるもの)
無事故手当
月1〜2万円程度。事故を起こすとゼロになります。会社としては、事故が一番の損失なので、ここにお金をかけます。
皆勤手当
月1万円程度。休むと消えます。体調管理ができる方には実質的な固定給になります。
運行手当・距離手当
1運行いくら、1kmいくら、という形。長距離ほど大きくなります。ここが収入差の一番大きな要因です。
積み降ろし手当
手作業で荷物を扱う場合につくことがあります。逆に言えば、この手当がある求人は「手積み・手降ろしがある」ということです。体力面で重要な情報になります。
「固定残業代」の落とし穴
ここは特に注意して見てください。
求人票に「月給30万円(固定残業代◯時間分を含む)」と書かれていることがあります。
これは「あらかじめ◯時間分の残業代を給料に含めています」という意味です。
確認すべきこと
- 何時間分が含まれているか(40時間、60時間など)
- その時間を超えた分は別途支払われるか
- 残業がなかった月も、その額はもらえるのか
「45時間分の固定残業代込み」でも、45時間働くことが支給の条件ではありません。実際の残業が45時間に満たない月も、固定残業代は全額支払われます(山梨労働局の説明)。
そして、超えた分を払わない会社は違法です。面接で必ず確認してください。
この質問、遠慮しなくて大丈夫です
「固定残業代のことを聞いたら、細かい人だと思われないか」と心配される方がいます。
結論から言うと、まったく問題ありません。
うちでは面接のときに、固定残業代の内容をこちらから説明しています。そして実際に、応募者の方から聞かれることもあります。
聞かれて嫌だと思ったことは一度もありません。むしろ「ちゃんと理解しようとしている人だな」と感じます。
逆に、この質問に対して曖昧に答える会社、話をそらす会社は、正直 何かあると思ってください。
ここまで読んで、「実際の求人はどうなっているんだろう」と思われたら——
先に求人を1つ2つ見ておくと、この続きが具体的に読めます。
手取りはいくらになるのか
これもよく聞かれます。ざっくりですが、額面の75〜80%程度が手取りの目安です。
- 額面30万円 → 手取り23〜24万円前後
- 額面35万円 → 手取り27〜28万円前後
手取りは、額面から所得税・住民税・社会保険料などを差し引いた金額です。扶養家族の人数などで変わるため、上の金額はあくまで目安です。
面接では「額面」で話が進みます。生活設計をするときは、この差を頭に入れておいてください。
うちの1年目は、月25万円くらいです
「人には聞けと言うのに、自分は言わないのか」と思われたくないので、正直に書きます。
うちに入って1年目の方で、月25万円ほどです。地場配送(毎日家に帰れる仕事)での金額です。
これを高いと見るか安いと見るかは、地域や生活によって違うと思います。ただ、「月給35万円〜」という求人票の数字とは、だいぶ違うということは知っておいてください。
長距離に乗ればもっと上がります。大型なら、さらに上がります。でも、その分は必ず何かと引き換えです(詳しくは長距離と地場、どちらを選ぶべきかに書きました)。
面接で「1年目で実際いくらですか」と聞かれたら、私はこう答えます。答えられない会社の方が、むしろおかしいと思ってください。
給料が上がる3つの条件
採用する側として、給料が上がる人の条件ははっきりしています。
1. 車格を上げる
2トン→4トン→大型→トレーラー。これが一番はっきり効きます。大型・牽引まで行くと、収入は大きく変わります。
2. 長距離に乗る
収入は上がります。ただし生活は激変します。詳しくは長距離と地場、どちらを選ぶべきかにまとめました。
3. 無事故を続ける
地味ですが、これが一番大きいです。事故を起こすと、無事故手当が消えるだけでなく、会社からの信頼が下がり、いい仕事が回ってこなくなります。
逆に、無事故で長く働いている方には、条件のいい仕事を優先的に回します。これは正直な話です。
実際に、うちで給料が上がった人の共通点
免許や車格の話は他でも読めると思うので、もっと地味だけど確実な話を書きます。
うちで給料が上がった方に共通しているのは、この2つです。
- 会社への貢献度(急な穴を埋めてくれる、後輩を見てくれる、など)
- 無事故を続けている
そしてもう一つ、はっきり言えることがあります。
「決まったコース以外の仕事もやってくれる人」は、当然ですが上がります。
誰かが休んだ日、急な依頼が入った日に「行けますよ」と言ってくれる人。会社としては、本当に助かります。そういう方に報いないと、会社としても示しがつきません。
逆に言えば、「決まったことだけやりたい」という働き方でも構いません。それはそれで真面目な働き方です。ただ、その場合は給料が大きく上がることは期待しない方がいい、というだけの話です。
どちらを選ぶかは、その人の生活次第だと思います。
面接で必ず聞くべき5つ
給料について確認すること
- 基本給はいくらですか?
- 歩合や手当は、どういう計算ですか?
- 固定残業代は含まれていますか?何時間分ですか?
- 超過分は別途支払われますか?
- 入社1年目の方は、実際いくらくらいもらっていますか?
最後の質問が特に効きます。「実際のところ、1年目でいくらですか」——これに正直に答えてくれる会社は、信用できます。
私も聞かれたら答えます。隠す理由がないからです。
条件を比べないと、相場は分かりません
ここまで読んで「結局いくらもらえるの?」と思われたかもしれません。
正直に言うと、会社・地域・車格・荷主によって、驚くほど違います。同じ地域、同じ4トン車でも、月に5万円以上差があることは珍しくありません。
だからこそ、最低3社は比べてください。1社だけ見て決めると、それが高いのか安いのかも分かりません。
- ドライバー専門の求人サイトを使う(給与の内訳が細かく書かれています)
- 複数のサイトに登録しておく(同じ地域でも掲載企業が違うので、給与の相場が見えてきます)
まずは条件を比べるところから
トラックマンジョブで求人を探すなお、求人票そのものの読み方、つまり会社がどこをぼかしているのか、「月収40万可能」の数字がどう作られているのかは、求人票を書いている側の話にまとめました。
月給の総額だけでなく、内訳で比べる
給料で見るべきポイント
- 月給には歩合・手当・固定残業代が含まれる場合がある。内訳を確認する
- 本当に見るべきは「基本給」
- 固定残業代は「何時間分か」を必ず確認
- 手取りは額面の75〜80%程度
- 収入を上げるなら、車格・長距離・無事故
- 最低3社は比較する
お金の話は、聞きにくいものです。でも、生活がかかっているのだから、聞いて当然です。
きちんと説明してくれる会社を選んでください。それだけで、入社後の後悔はぐっと減ります。