トラック求人26件を調べたら88%が基本給を書いていませんでした|書いている社長が理由を白状します
※記載内容は筆者個人の経験に基づく見解です。会社により事情は異なります。会社名は一切掲載していません。
地方でトラック運送会社を経営しています。ドライバーを20名ほど雇っています。
このサイトで「求人票はぼかして書いてある」と何度も書いてきました。
でも、こう思われた方もいると思います。
「それって、本当にそうなの?」
だから、実際の求人票を26件、数えました。
まず、結果です
| 項目 | 書いてある | 書いていない |
|---|---|---|
| 車格(2t・4t・大型) | 24件(92%) | 2件 |
| 休みの書き方 | 21件(81%) | 5件 |
| 積み降ろしの方法 | 18件(69%) | 8件 |
| 基本給の金額 | 3件(12%) | 23件(88%) |
| 固定残業代 | 3件(12%) | 23件(88%) |
| 年間休日の日数 | 4件(15%) | 22件(85%) |
※2026年8月31日調査。トラック運転手の求人サイトから、関東10件・関西10件・東海6件を抽出。貴重品運搬警備・軽貨物・倉庫内作業・整備・引越しは除いています。会社名は記録していません。
きれいに分かれました
26件を数えて分かったこと
- 仕事の中身(車格・積み降ろし)は、だいたい書いてある
- お金と休みの中身(基本給・固定残業代・年間休日)は、ほとんど書いていない
数字にすると、思っていた以上にはっきりしていました。
ここから先は、求人票を書いている側として、なぜこうなるのかを説明します。
ここまで読んで、「実際の求人はどうなっているんだろう」と思われたら——
先に求人を1つ2つ見ておくと、この続きが具体的に読めます。
【最重要】なぜ、基本給を書かないのか
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
正直に白状します。
基本給は、少なく抑えたいんです
会社側から見ると、基本給は少なく抑えたいのが本音です。
理由ははっきりしています。
基本給が上がると、残業代と休日出勤の単価が上がるからです。
——でも、ここで問題が起きます。
基本給を低くすると、求人票の見た目が悪くなる。
だから「総支給額」だけを書いてしまうのかもしれません。
これが、求人票のカラクリの正体です
順番に並べると、こうなります。
会社側の事情
- 残業代は、基本の時給をもとに割増して計算される
- だから基本給が高いほど、残業代も高くなる
- 会社としては、基本給は抑えたい
- でも「基本給18万円」と書くと、安く見える
- だから「月給35万円」と、総額だけ書く
だましているつもりはない、というのが正直なところです。嘘は書いていませんから。「月給35万円」は、本当に35万円もらえる月があるのですから。
でも——応募する側から見れば、中身が分からないのは同じです。
だから、これだけは聞いてください
面接で必ず聞く3つ
- 「基本給はいくらですか?」
- 「固定残業代は何時間分で、いくらですか?」
- 「その時間を超えた分は、別に支払われますか?」
この3つに、はっきり答えられる会社は信用できます。答えを濁す会社は、それが答えです。
ひとつ、知っておいてほしい法律の話
「じゃあ手当を増やして基本給を下げれば、残業代は安くできるのか」——そう思われるかもしれません。
そう単純ではありません
- 残業代の計算から外していい手当は、法律で決まっています(家族手当・通勤手当・住宅手当など)
- それ以外の手当は、計算に入れないといけません
- 固定残業代も、何時間分でいくらかを明示し、超えた分は別に払う必要があります
だから、聞いていいんです。本来は書いてあるべきことなので。
「月給30万〜45万円」の、45万に届く人は何人か
26件の中に、こういう書き方がいくつもありました。
実際にあった月給の書き方
- 月収例 30万円〜45万円
- 35万円〜50万円
- 331,013円〜493,000円
下と上で、15万円以上の差があります。
では、上に届く人は実際にどれくらいいるのか。うちの数字で答えます。
20人のうち、1人か2人です
上限に届くのは、そこまで働きたがる人です。
うちで言えば、20人中、1人か2人くらいです。
つまり——1割いるかどうかです。
これが、求人票の上の数字の意味です
| 下の数字(30万) | 上の数字(45万) | |
|---|---|---|
| 誰の数字か | 普通に働いた場合 | 一番働いた人 |
| 何人くらいか | ほとんどの人 | 20人に1〜2人 |
| 見るべきは | こちら | 参考程度に |
求人票を見るときは、下の数字で生活を組み立ててください。上の数字は「頑張ればここまで行ける人もいる」という話です。
ここまで読んで、「実際の求人はどうなっているんだろう」と思われたら——
先に求人を1つ2つ見ておくと、この続きが具体的に読めます。
【正直に】上限の金額に届くには、どれくらい働くのか
ここは、隠さずに書きます。
かなり働かないと、無理です
調べた26件の月給を見て、正直に思ったことを書きます。
上限の金額に届くには、かなり働かないと無理です。
おそらく法令ギリギリか、もしくは違反しているか——そう思います。
そして、ここも正直に言います。
それでも働きたい人はたくさんいますし、働かせている会社もたくさんあると思います。
だから、時間の上限を知っておいてください
トラック運転者の労働時間には、上限があります
- 時間外労働は年960時間まで(月平均80時間)
- 拘束時間にも1日・1か月の上限があります
- これは2024年4月から適用されているルールです
「月50万円もらえます」と言われたら、こう聞いてください。
「それは、月に何時間働いた場合の金額ですか?」
この質問に答えられない会社は、その時点で分かります。
この業界の変化については2024年問題から2年に書きました。
「週休1〜2日」と書いてある会社の本音
26件の中に、この書き方が何件もありました。
「週休1〜2日」
1なのか2なのか、はっきりしません。書いている側として、正直に答えます。
できれば、多く働いてほしいと思っています
「週休1〜2日」と書く会社は、できれば多く働いてほしいと思っています。
つまり——「1」の方が本音に近いということです。
「2」は、できる週もある、という意味です。
ここは、はっきり聞いてください。
休みについて聞くこと
- 「先月、実際に何日休めましたか?」(予定ではなく実績)
- 「週休2日になるのは、どういう月ですか?」
- 「希望を出せば休めますか?」
1つ目が一番大事です。「制度」ではなく「実績」を聞いてください。
「年間休日」ではなく「月9回」と書く会社
これは、私も数えていて気づいたことです。
年間休日の日数を書いている会社は、26件中4件しかありませんでした。他はこういう書き方です。
実際にあった休日の書き方
- 月9回
- 月6日休み
- 月8日休制(シフト制)
- 週休1〜2日
なぜ「年間◯日」と書かないのか。私の見立てを書きます。
それ以外に、休みがないんだと思います
「月9回」としか書かないのは、それ以外に休みがないからだと思います。
具体的には——年末年始、お盆、ゴールデンウィーク。
こういうまとまった休みがあれば、年間休日の日数として書けます。書けるなら書きます。その方が見栄えがいいですから。
書いていないということは、たぶんそういうことです。
これは、日数が同じでも中身が違うという話です
| 「年間休日105日」 | 「月9回」 | |
|---|---|---|
| 年間の日数 | 105日 | 108日(9×12) |
| 連休 | 年末年始・お盆・GWを含むことが多い | 毎月バラバラの可能性 |
| 家族との予定 | 立てやすい | 立てにくい |
日数だけ見れば「月9回」の方が多いんです。でも、まとまった休みがあるかどうかは、まったく別の話です。
お子さんがいる方、家族と過ごす時間を大事にしたい方は、ここを必ず聞いてください。
この一言で分かります
- 「年末年始とお盆は、休みになりますか?」
うちの休みの実際は年間休日の記事に書きました。
【逆に】なぜ、積み降ろしは書くのか
ここまで「書いていないこと」の話をしてきました。
でも、逆も気になりませんか。
基本給は12%しか書かないのに、積み降ろしは69%が書いている。お金より、仕事のきつさの方が正直に書いてある。なぜでしょうか。
書いている側として、私の見立てを2つ書きます。
理由は、たぶん正反対の2つです
①最初に振り落とすため
「手積みです」と先に書いておけば、無理な人は応募してきません。入ってすぐ辞められるより、その方がいいんです。
②やりやすい仕事だから、書いている
カゴ降ろし、リフト降ろし。楽な仕事なら、書いた方が人が集まります。
——つまり「振り落とすため」と「集めるため」、正反対の理由があると思います。
調べた18件を分けてみたら、きれいに半々でした
実際に数えてみました。
| どう書いてあったか | 件数 | たぶん、こういう意図 |
|---|---|---|
| 機械・リフト・台車・パレット中心 | 9件 | 楽なので集めたい |
| 手積み・手作業と明記 | 9件 | きついので先に振り落としたい |
※分類は筆者の判断によるものです。「パレットと手作業が混在」など両方を含む記載は、手作業ありに数えました。
ちょうど半分ずつでした。2つの理由が、両方とも起きているということです。
実際にあった書き方を並べると、違いがよく分かります。
集めたい側の書き方
- 「手積み手卸しナシ」
- 「積み下ろしは基本フォークリフトを利用」
- 「重量物の積み下ろしは機械を使用する」
- 「台車を用いた運搬を行います」
振り落としたい側の書き方
- 「手積み」
- 「手積み・手降ろしで、台車を用いて運搬」
- 「原則手で積み下ろし作業、重量物はフォークリフト」
【本題】では、書いていない8件は何なのか
ここが、応募する側にとって一番大事なところです。
積み降ろしについて何も書いていない求人が8件ありました。これをどう読むか。
楽な仕事なら、内容はしっかり書きます
私が求人票を書く立場なら、こうします。
楽な仕事なら、内容はしっかり書きます。
だってその方が、人が集まりますから。書かない理由がありません。
——では、書いていないのはなぜか。考えられるのは2つです。
- いろんな仕事があって、書けない(荷物が日によって違う)
- しんどい仕事なのかもしれない
ここから、ひとつの読み方ができます
積み降ろしの記載がない求人を見たら
- 「楽な仕事なら書くはず」——書いていないのは、そうではない可能性
- ただし「荷物が日によって違うから書けない」だけのこともある
- どちらなのかは、聞けば分かります
決めつけないでください。本当に書きようがない会社もあります。
だから、こう聞いてください。
この2つを聞けば分かります
- 「荷物は毎日同じですか、日によって変わりますか?」
- 「積み降ろしは、手作業ですか。機械を使いますか?」
ここですらすら答える会社は、書かなかっただけです。言葉を選ぶ会社は、書けなかったのかもしれません。
うちの積み降ろしの実際はこの仕事はきついのかに書きました。基本的に手作業です。隠していません。
【注意】地域が違えば、金額も変わります
最後に、大事な注意です。
物価が違うので、運賃も違います
荷主さんから、こう聞いたことがあります。
関東圏・中部圏・関西圏では、物価が違うため運賃も違う。
運賃が違えば——給料の体系も違ってくるはずです。
だから、こうしてください。
求人票の月給を比べるとき
- 同じ地域どうしで比べる
- 他の地域の金額を見て「うちの地域は安い」とすぐに判断しない
- それより同じ荷物・同じ車格で比べる(食品と建設資材では別物です)
この記事の数字も、地域差の証明にはなりません。26件では少なすぎるからです。
数字として出せるのは「書き方の傾向」だけです。金額の高い安いは、ご自身の地域で確かめてください。
まとめ
求人票26件を数えて分かったこと
- ★基本給を書いているのは 26件中3件(12%)
- ★固定残業代を書いているのも3件(うち1件は時間数だけで金額なし)
- ★年間休日の日数を書いているのは4件
- 逆に車格は92%、積み降ろしは69%が書いている
- ★積み降ろしを書く理由は正反対の2つ。「楽だから集めたい」9件と「きついから振り落としたい」9件で半々
- ★楽な仕事なら書くはず。書いていない8件は、そうではない可能性(ただし荷物が日替わりで書けないだけのことも)
- ★基本給を書かないのは「少なく抑えたいが、書くと見た目が悪い」から
- ★「月給30万〜45万」の45万に届くのは、20人中1〜2人
- ★上限に届くには、かなり働かないと無理(時間外は年960時間が上限)
- ★「週休1〜2日」は「1」が本音に近い
- ★「月9回」と書く会社は、年末年始・お盆・GWがない可能性
- 地域で運賃が違うので、月給は同じ地域どうしで比べる
求人票は、嘘は書いていません。
でも——書いていないことがあります。そして書いていない部分に、あなたが知りたいことが入っています。
だから、面接で聞いてください。中小の運送会社なら、決められる人が面接に出てきます(面接の記事)。その場で全部聞けます。
聞いて嫌な顔をする会社なら、その反応が答えです。