潰れる運送会社の特徴|社長が見てきた「消えていった会社」の共通点と外から分かるサイン
※記載内容は筆者個人の経験に基づく見解です。個別の労務・法律問題は専門機関にご相談ください。
地方でトラック運送会社を経営しています。ドライバーを20名ほど雇っています。
転職で一番怖いのは、実はこれだと思います。
入った会社が、なくなってしまうこと。
給料が遅れる。荷主を失って仕事が減る。ある日突然、会社が立ち行かなくなる。運送業界では、実際に起きていることです。
でも——それを外から見抜く方法を教えてくれる人が、誰もいません。
この記事では、同じ業界で長くやってきた立場から、消えていった会社に何が共通していたかを書きます。
消えていった会社に、共通していたこと
手を広げすぎて、何でも安く請けた会社です
私の周りで潰れた会社には、はっきりした共通点がありました。
- 幅広く手を広げすぎた
- 仕事を選ばなかった
- 何でも安く請けた
そして——後で自分の首を締めることになりました。
目先の仕事が欲しくて、安い金額で引き受ける。台数を増やして、人を増やして、また安い仕事を取ってくる。
一見、会社は大きくなっているように見えます。でも中身は違います。安い仕事を回すために、どんどん無理をすることになる。
そして、その無理は必ずどこかに出ます。
その「無理」は、ドライバーに来ます
ここが、応募する方にとって一番大事なところです。
安く請けた仕事は、安いままです。それでも会社を回そうとすると、こうなります。
安請け合いの会社で、現場に起きること
- 1人あたりの件数が増える(同じ売上を出すため)
- 拘束時間が伸びる
- それなのに給料は上がらない(元の単価が安いので)
- 断れない仕事が増えて、休みが取りにくくなる
会社の経営判断は、必ずドライバーの働き方に跳ね返ります。「安く請ける会社」は、そのままドライバーがきつい会社です。
逆に、長く続く会社がやっていること
うちは、ある荷主さんと40年以上のお付き合いをいただいています。
なぜ続いたのか。自分なりに考えると、この4つだと思っています。
長く続けるために、うちがやってきたこと
① 相手に喜ばれるように努める
荷主さんに「この会社に頼んでよかった」と思ってもらう。それが全部の土台です。
② 当たり前のことを、しっかりやる
時間を守る。数を合わせる。丁寧に扱う。特別なことは何もありません。当たり前を、当たり前にやり続けるだけです。
③ ただし、荷主の言いなりにはならない
ここが大事なところです。喜ばれるように努めることと、言いなりになることはまったく別です。
④ ドライバーが気持ちよく取り組める仕事を選ぶ
ドライバーは財産です。だから、うちは仕事を選んでいます。
無理な条件、危ない条件、現場が疲弊するだけの仕事は、受けません。受けない勇気を持つことが、結局は会社を守ります。
【重要】「仕事を選ぶ会社」を選んでください
この記事で、一番お伝えしたいのがここです。
求人を探すとき、「仕事がたくさんある会社=安定している会社」と思いがちです。これは、必ずしも正しくありません。
同じ「仕事が多い」でも、中身が違います
- ◎ 選んだ結果、良い仕事が多い会社 → 続きます
- △ 選ばずに何でも受けた結果、仕事が多い会社 → 現場が疲弊します
ドライバーを守るために断れる会社かどうか。ここが、長く働けるかどうかの分かれ目です。
逆に、続かない会社の特徴
今の逆をやっている会社です
荷主さんに切られる会社には、こういう特徴があります。
- 同じミスばかり繰り返す
- ミスをした後の対応が悪い
- ドライバーのことを考えていない
ミス自体は、どこの会社でも起きます。人がやることですから、ゼロにはできません。
問題は、その後です。同じことを繰り返す。謝り方が悪い。原因を直さない。これが積み重なると、荷主さんは静かに離れていきます。
そして——ドライバーのことを考えていない会社は、結局ミスが減りません。
疲れているドライバー、追われているドライバー、不満を抱えたドライバーは、ミスをします。当然のことです。
だから「社員を大事にしない会社は、荷主にも切られる」——これは、きれいごとではなく現実です。
荷主さんが実際に何を見ているかは、荷主先で嫌われるドライバーの特徴に詳しく書きました。
【本題】外から分かる、2つのサイン
「経営が危ないかどうかなんて、応募する側には分からない」——そう思われるかもしれません。
ところが、外からでも見えるサインがあります。私が挙げるなら、この2つです。
① 給料を下げる会社
これは、はっきりした危険信号です。
会社が儲かっていれば、給料を下げる理由はありません。下げるということは、下げなければ回らないということです。
そして一度下げた会社は、また下げます。
② ドライバーの入れ替わりが激しい
これが、一番分かりやすいサインだと思います。
人がすぐ辞める会社には、必ず辞める理由があります。
給料が安い、休めない、無理な仕事ばかり、人の扱いがひどい——理由はいろいろですが、働いている人が「ここは続けられない」と判断したという事実は変わりません。
ちなみに、うちのドライバーの平均勤続年数は10〜15年ほどです。良い悪いは別として、この数字は嘘をつきません。
だから、面接ではこう聞いてください
会社の体力を測る質問
- 「平均の勤続年数は、どれくらいですか?」
- 「今、何人のドライバーさんがいますか? 去年は何人でしたか?」
- 「この募集の理由は、増員ですか、欠員の補充ですか?」
- 「主な荷主さんとは、どれくらいのお付き合いですか?」
- 「給料が下がったことは、過去にありますか?」
特に「常に募集している会社」には注意してください。何ヶ月も、何年も求人が出続けている会社は、それだけ人が抜けているということです。
求人票の読み方はブラック運送会社の見分け方7つにまとめました。
給料の遅配について、正直に書きます
聞きにくい話だと思うので、先に答えます。
給料の遅配は、実際にあります
「給料が遅れる」という話は、この業界で実際にあります。
隠しても仕方がないので、はっきり書きます。私の耳にも入ってきます。
これは、会社の資金繰りが行き詰まっているということです。一度でも起きたら、その会社は相当危ないと考えてください。
これは、法律違反です
知っておいていただきたいのですが——給料の遅配は、法律に違反する可能性が高い行為です。
賃金の支払いには、ルールがあります
- 賃金は毎月1回以上、決まった日に、全額支払わなければなりません(労働基準法)
- 会社が一方的に給料を下げることも、原則として認められません
- おかしいと感じたら、お住まいの地域の労働基準監督署に相談できます。相談は無料です
※個別のケースによって扱いは変わります。実際に困ったときは、労働基準監督署や労働相談窓口など、専門機関にご相談ください。
「うちは今、厳しくてね」と言われて我慢する必要はありません。それは、あなたが背負う問題ではないからです。
では、小さい会社は不安なのか
ここまで読むと、「大きい会社の方が安心では」と思われるかもしれません。
うちは20人の小さな会社です。だから、正直に両面を書きます。
小さい会社の強みは、距離の近さです
小さい会社にしかできないことがあります。
- 従業員一人ひとりに寄り添える
- 意見を直接聞ける。改善してほしいこと、悩んでいることを、親身に聞ける
- 会社の改善を、すぐに実行できる
「こうしてほしい」と言われたことを、その週のうちに変えられる——これは、大きな組織にはできないことだと思います。
大きい会社だと、現場の声が上まで届くのに時間がかかります。届いても、動くのにまた時間がかかる。
うちは、私が直接聞いて、私がその場で決められます。これが、小さい会社の一番の強みです。
ただし、弱みも書いておきます
公平のために、正直に書きます。
小さい会社の弱み
- 出世のポストが少ない(役職が限られています)
- 荷主が少ないと、1社を失ったときの打撃が大きい
- 設備投資に限りがある(うちもデジタコを入れておらず、日報は手書きです)
つまり——「大きいから安心」でも「小さいから危ない」でもありません。
見るべきは規模ではなく、仕事を選んでいるか、人が辞めていないかです。
うちの設備面の正直なところは運送会社の福利厚生に書きました。
まとめ
危ない会社のサイン
- 何でも安く請けている(仕事を選んでいない)
- 荷主の言いなりで、ドライバーに無理が来ている
- 給料を下げたことがある
- ドライバーの入れ替わりが激しい/常に募集している
- 給料の遅配がある(これは危険信号です)
長く続く会社の特徴
- 当たり前のことを、当たり前にやり続けている
- 荷主に喜ばれる努力をしつつ、言いなりにはならない
- ドライバーを財産と考え、仕事を選んでいる
- 勤続年数が長い(人が辞めていない)
- 荷主との付き合いが長い
会社の経営状態は、決算書を見なくても「そこで働いている人が辞めていないか」で、かなり分かります。
人は、正直です。続けられる会社なら続けますし、無理な会社なら辞めます。だから勤続年数は、どんな求人広告よりも正確な情報です。
「長く働けそうな会社」を探す
求人票には書かれていないことこそ、確かめる価値があります。
- ドライバー専門の求人サイトを使う(設立年や従業員数まで載っていることが多いです)
- 複数のサイトに登録しておく(同じ会社が何年も募集し続けていないか、比べると見えてきます)
- 面接で「平均勤続年数」と「募集の理由」を必ず聞く