収入は工場より下がりました。それでも「もう辞められない」|異業種から来たドライバーに聞いた話

業界20年/運行管理者/運送会社 経営者(ドライバー20名を雇用) 運営者について
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※本人の同意を得て掲載しています。氏名・年齢・前職の会社名は記載していません。1人の体験であり、会社やコースによって条件は大きく異なります。

地方でトラック運送会社を経営しています。ドライバーを20名ほど雇っています。

うちに、自動車工場からトラックドライバーに転職してきた社員がいます。

本人が「もう辞められません」と言っていると聞いたので、直接 話を聞いてきました。

私の意見ではなく、本人の言葉をそのまま書きます。

先に、一番大事なところを書きます

本人の言葉

「収入面に関しては、工場のほうが全然良かったです」

これが、本人の答えです。

転職して、収入は下がりました。

それでも「もう辞められない」と言います。

ここが、この記事の全部です。

収入が上がったから満足している、という話ではありません。下がったのに、辞められない。その理由を聞いてきました。

まず、なぜ工場を辞めたのか

やっていたのは、ラインと検査でした。

辞めた理由

「毎日同じ作業で、何かあるとすぐに工場が止まる」

理由は2つ挙げていました。

  • 毎日、同じ作業のくり返し
  • 何かあると、すぐに工場が止まる

そして、こう続けました。

「有給があれば使えますが、ないと無給です」

ここは、あまり知られていないと思います。

工場が止まると、その日は働けません。有給が残っていれば使えますが、無ければ そのぶん収入が減ります。自分のせいではないのに、です。

「収入が安定している」と思われがちな工場勤務にも、こういう面があるということです。

不安だったこと

辞める前の不安

「トラック業界自体、いいイメージがなかった」

本人が挙げた不安は、はっきりしていました。

  • 収入が下がること
  • トラック業界のイメージ——きつい、汚い、安い、拘束時間が長い

家族に反対されることはなく、自分で決めたそうです。

この4つのイメージは、私も同業として知っています。実際、当たっている部分もあります。

ただ——実際に入ってみたら、そこが一番の想定外だったそうです。あとで書きます。

なぜ、トラックを選んだのか

ここは、正直な答えが返ってきました。

選んだ理由

「すぐに働けたから」

それだけです。

「昔から運転が好きで」とか「憧れていて」という話ではありませんでした。

私は、これでいいと思っています。

採用する側から見ても、「すぐ働ける」は運送業の大きな強みです。資格が要る仕事のように、何ヶ月も準備する必要がありません。

辞めてから次までの空白が短い。これは、生活を守るうえで意外と大きいことです。

ここまで読んで、「実際の求人はどうなっているんだろう」と思われたら
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どうやって会社を見つけたか

探し方

求人サイトで探していた。ただし、入ったのは紹介

会社を探すときは求人サイトを使っていたそうです。

ただし、うちに入ったきっかけは社員の紹介でした。

これは、正直に書いておきます。この人は、求人サイト経由でうちに来たわけではありません。

ただ、求人サイトで相場を見ていたことは効いています。紹介で入るにしても、他がいくら出しているか知らなければ、条件が良いのか悪いのか判断できません。

面接で、何を聞いたか

面接のとき

本人から聞いたのは、この3つでした

聞かれたのは「今までどんな仕事をしていたか」くらいだったそうです。

逆に、本人から聞いたのはこの3つです。

  • いつから働けますか(「すぐに働きたい」と伝えた)
  • 求人票をもとに、給料の中身を詳しく
  • 休日について

これは、いい聞き方だと思います。

特に「求人票をもとに、給料を詳しく」のところ。求人票の金額は、そのままでは意味が分かりません(給料のカラクリ)。基本給がいくらで、手当がいくらで、固定残業代が何時間分か。ここを面接で詰めています。

求人票がどう書かれているかは、出す側の立場からも書きました

【本題】想像と、実際で一番違ったこと

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。

良い方向で違ったこと

本人の言葉

「拘束時間がもっと長いと思っていましたが、そんなことはなかった」

一番の想定外は、ここだったそうです。

定時は9時間。ところが実際は——

  • 8時間くらいで終わる日がある
  • 7時間くらいで終わる日もある

「定時で上がれることが結構あります」

不安に挙げていた「拘束時間が長い」が、逆でした。

なぜ、そうなるのか

仕事の中身を聞いて、理由が分かりました。

仕事の流れ

朝 積み込んで、10件ほど回って、終わり

朝、荷主さんのところへ行って積み込みをします。

そこから10件くらい回って、やり切りで終わりです。

物量は日によって変わります。暇なときは早く帰れます。

忙しいときは遅くなりますが、そのぶん残業がつくので問題ないとのことでした。

「やり切り」というのが、ここでの鍵です。

決められた件数を配り終われば、その日は終わりです。早く終われば、早く帰れる。時間で縛られる働き方とは、ここが決定的に違います。

悪い方向で違ったこと

良い話だけでは公平ではないので、こちらもそのまま書きます。

本人の言葉

「荷主さんとの付き合いが、少しなあなあな部分がある」

本人が挙げた、唯一の困りごとです。

荷主さんとの関係に、はっきりしない部分がある。

だから「荷主さんの言うことを、少し聞かなきゃいけない部分がある」そうです。

ここは、私も同業として分かります。

運送業は、荷主さんあっての仕事です。契約書に書いていないことでも、頼まれれば断りにくい場面が出てきます。

これは会社によって、そして荷主さんによって、大きく違います。荷主さんとの関係については別の記事にも書きましたが、面接では見えない部分です。

最初の1ヶ月は、どうだったか

本人の言葉

「しんどいことはなかったが、覚えることは多かった」

体力的にしんどいことは、特になかったそうです。

ただし、覚えることは たくさんありました。

  • ルート
  • 積み込みの仕方
  • フォークリフトの操作

「でも、慣れてしまえば何の問題もありません」

未経験で入る方は、ここを覚えておいてください。

最初の壁は体力ではなく、覚える量です。そして それは、慣れれば消えます。3ヶ月の壁と言われるのは、たぶんここです。

フォークリフトについては、資格の話にまとめてあります。

工場とトラック、5つで比べてもらいました

本人の言葉を、そのまま表にします。

本人が比べた、工場とトラック
 自動車工場トラック(今の仕事)
体のきつさ問題なかった同じコースなので、きつくない。ただし繁忙期は荷物が増えてしんどい日も
気持ちのきつさ単純作業がずっと続く。時間が長く感じる一人なのでかなり気楽
収入工場のほうが全然良かった下がった
自由さ好きなところで休憩できる。早く帰りたい日は休憩を取らずに帰ることも
生活リズム夜勤と昼勤があり、リズムを取るのが大変一定

収入だけは、はっきり工場の勝ちです。本人がそう言っています。

それ以外の4つが、トラックに寄っている。この差が「もう辞められない」につながっています。

「もう辞められない」の意味

本人の言葉を、なるべくそのまま載せます。

本人の言葉

「早く終わらせれば早く帰れる。自分の考えたルートで回れる」

「私のコースはやり切りなので、早く配送を終わらせてしまえば、早く終わることができます。」

「なおかつ、自分のペースで、自分の考えたルートで回ることができるので、とてもやりやすく思っております」

「運送会社全般に言えるのが、やはり一人でやれるのが かなり気楽な部分があり、自分のペースで淡々と仕事ができる。それが理由の一つになります」

まとめると、こういうことだと思います。

「辞められない」理由は、お金ではありませんでした

  • 早く終われば、早く帰れる
  • ルートを自分で考えられる
  • 休憩を自分で決められる
  • 一人で、誰にも見られずに働ける

収入は下がった。でも、時間と裁量が増えた。その交換に、本人は満足しているということです。

ただし、本人が自分で釘を刺しています

ここを書かないと、この記事は宣伝になります。

本人の言葉

「どこの会社にも当てはまるとは思いません」

「もう辞められません」の話をする前に、本人が自分でこう前置きしました。

そして、こうも言っています。

「どこの会社も似たような給料だと思いますが、やはり仕事内容が良ければいいのですが、悪いと結構しんどいことになるかもしれません」

ここが一番 大事です。

この人が満足しているのは、「トラックドライバーだから」ではなく「このコースだから」です。

だから、面接ではここを聞いてください

  • 「私が担当するコースは、どういう流れですか?」
  • 「やり切りですか、それとも時間で拘束されますか?」
  • 「1日に何件くらい回りますか?」
  • 「定時は何時間で、実際は何時間くらいで終わっていますか?」

「会社が良いか」より「そのコースが良いか」です。同じ会社でも、コースが変われば別の仕事になります。

向いていない人

本人に聞いたら、はっきり答えが返ってきました。

本人の言葉

「運転が苦にならない方のほうがいいです」

「荷物を運ぶのが仕事ですが、やはり一人で運転をすることになるので、ここは大事かなと思います」

当たり前のようですが、これは本質だと思います。

「一人が気楽」と感じる人には天職になります。逆に一人が苦手な人には、同じ条件がきつさになります。

そして、同じ道を通る人へのアドバイス

本人の言葉

「言われてるほど、悪い業界ではないかなと思っております」

「特に昨今、いろいろ整備もされてきていますので、働き方だったり、ドライバー目線で考えてくれる会社も とても多くなっていると思います」

入る前は「きつい・汚い・安い・拘束時間が長い」というイメージを持っていた人が、入ったあとにこう言っています。

私は同業なので、この言葉を自分では書けません。だから、本人の言葉のまま置いておきます。

雇っている側から、正直に

最後に、私からも一言だけ書いておきます。

この記事の読み方について

  • 私はこの人を雇っている側です。気を遣って良く言ってくれた可能性はあります
  • ただし「収入は工場のほうが全然良かった」とはっきり言われました
  • 荷主さんとの付き合いについても、困っていると言われました
  • だから、全部を良く言ってくれたわけではないと思っています

都合の悪いことを言ってもらえたので、この記事を書きました。そうでなければ、載せていません。

まずは相場を知るところから

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まとめ

異業種から来た人に聞いて分かったこと

  • 収入は、はっきり工場のほうが良かった
  • それでも「もう辞められない」と言う
  • 工場を辞めた理由は、単純作業と「止まると無給」
  • トラックを選んだ理由は「すぐに働けたから」
  • 一番の想定外は拘束時間が短かったこと(定時9時間、実際7〜8時間の日も)
  • 理由は「やり切り」の仕事だから。早く終われば早く帰れる
  • 困っているのは荷主さんとの付き合い。言うことを聞かざるを得ない部分がある
  • 最初の壁は体力ではなく覚える量(道・ルート・積み込み・リフト)
  • 「辞められない」理由は、一人で自分のペースで働ける自由
  • ただし本人が「どこの会社にも当てはまるとは思わない」と釘を刺しています

収入が下がっても続けられる仕事がある。それは、お金以外のところに何かがあるということです。

この人の場合は、時間と、自分で決められることでした。

それが自分にとっても価値のあるものかどうか。そこだけは、入る前に考えてみてください。

※本記事は、筆者が自社の従業員1名に対して行った聞き取りの記録です。掲載にあたっては本人の同意を得ており、氏名・年齢・前職の会社名など個人が特定される情報は記載していません。本記事の内容は、その方が担当している特定のコース・条件における体験であり、他の会社・他のコースに当てはまるものではありません。労働時間・給与・休日・業務内容は、会社・地域・荷主・車種によって大きく異なります。筆者は聞き取り対象者を雇用している立場にあり、回答に一定の配慮が含まれる可能性があります。その点を踏まえてお読みください。特定の企業を推奨・批判する意図はありません。法令や制度は変更される場合がありますので、最新の情報は公的機関の発表等でご確認ください。個別の労働条件や法律に関するご相談は、社会保険労務士・弁護士等の専門家、または労働基準監督署へお問い合わせください。