収入は工場より下がりました。それでも「もう辞められない」|異業種から来たドライバーに聞いた話
※本人の同意を得て掲載しています。氏名・年齢・前職の会社名は記載していません。1人の体験であり、会社やコースによって条件は大きく異なります。
地方でトラック運送会社を経営しています。ドライバーを20名ほど雇っています。
うちに、自動車工場からトラックドライバーに転職してきた社員がいます。
本人が「もう辞められません」と言っていると聞いたので、直接 話を聞いてきました。
私の意見ではなく、本人の言葉をそのまま書きます。
先に、一番大事なところを書きます
「収入面に関しては、工場のほうが全然良かったです」
これが、本人の答えです。
転職して、収入は下がりました。
それでも「もう辞められない」と言います。
ここが、この記事の全部です。
収入が上がったから満足している、という話ではありません。下がったのに、辞められない。その理由を聞いてきました。
まず、なぜ工場を辞めたのか
やっていたのは、ラインと検査でした。
「毎日同じ作業で、何かあるとすぐに工場が止まる」
理由は2つ挙げていました。
- 毎日、同じ作業のくり返し
- 何かあると、すぐに工場が止まる
そして、こう続けました。
「有給があれば使えますが、ないと無給です」
ここは、あまり知られていないと思います。
工場が止まると、その日は働けません。有給が残っていれば使えますが、無ければ そのぶん収入が減ります。自分のせいではないのに、です。
「収入が安定している」と思われがちな工場勤務にも、こういう面があるということです。
不安だったこと
「トラック業界自体、いいイメージがなかった」
本人が挙げた不安は、はっきりしていました。
- 収入が下がること
- トラック業界のイメージ——きつい、汚い、安い、拘束時間が長い
家族に反対されることはなく、自分で決めたそうです。
この4つのイメージは、私も同業として知っています。実際、当たっている部分もあります。
ただ——実際に入ってみたら、そこが一番の想定外だったそうです。あとで書きます。
なぜ、トラックを選んだのか
ここは、正直な答えが返ってきました。
「すぐに働けたから」
それだけです。
「昔から運転が好きで」とか「憧れていて」という話ではありませんでした。
私は、これでいいと思っています。
採用する側から見ても、「すぐ働ける」は運送業の大きな強みです。資格が要る仕事のように、何ヶ月も準備する必要がありません。
辞めてから次までの空白が短い。これは、生活を守るうえで意外と大きいことです。
ここまで読んで、「実際の求人はどうなっているんだろう」と思われたら
先に求人を1つ2つ見ておくと、この続きが具体的に読めます。
どうやって会社を見つけたか
求人サイトで探していた。ただし、入ったのは紹介
会社を探すときは求人サイトを使っていたそうです。
ただし、うちに入ったきっかけは社員の紹介でした。
これは、正直に書いておきます。この人は、求人サイト経由でうちに来たわけではありません。
ただ、求人サイトで相場を見ていたことは効いています。紹介で入るにしても、他がいくら出しているか知らなければ、条件が良いのか悪いのか判断できません。
面接で、何を聞いたか
本人から聞いたのは、この3つでした
聞かれたのは「今までどんな仕事をしていたか」くらいだったそうです。
逆に、本人から聞いたのはこの3つです。
- いつから働けますか(「すぐに働きたい」と伝えた)
- 求人票をもとに、給料の中身を詳しく
- 休日について
これは、いい聞き方だと思います。
特に「求人票をもとに、給料を詳しく」のところ。求人票の金額は、そのままでは意味が分かりません(給料のカラクリ)。基本給がいくらで、手当がいくらで、固定残業代が何時間分か。ここを面接で詰めています。
求人票がどう書かれているかは、出す側の立場からも書きました。
【本題】想像と、実際で一番違ったこと
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
良い方向で違ったこと
「拘束時間がもっと長いと思っていましたが、そんなことはなかった」
一番の想定外は、ここだったそうです。
定時は9時間。ところが実際は——
- 8時間くらいで終わる日がある
- 7時間くらいで終わる日もある
「定時で上がれることが結構あります」
不安に挙げていた「拘束時間が長い」が、逆でした。
なぜ、そうなるのか
仕事の中身を聞いて、理由が分かりました。
朝 積み込んで、10件ほど回って、終わり
朝、荷主さんのところへ行って積み込みをします。
そこから10件くらい回って、やり切りで終わりです。
物量は日によって変わります。暇なときは早く帰れます。
忙しいときは遅くなりますが、そのぶん残業がつくので問題ないとのことでした。
「やり切り」というのが、ここでの鍵です。
決められた件数を配り終われば、その日は終わりです。早く終われば、早く帰れる。時間で縛られる働き方とは、ここが決定的に違います。
悪い方向で違ったこと
良い話だけでは公平ではないので、こちらもそのまま書きます。
「荷主さんとの付き合いが、少しなあなあな部分がある」
本人が挙げた、唯一の困りごとです。
荷主さんとの関係に、はっきりしない部分がある。
だから「荷主さんの言うことを、少し聞かなきゃいけない部分がある」そうです。
ここは、私も同業として分かります。
運送業は、荷主さんあっての仕事です。契約書に書いていないことでも、頼まれれば断りにくい場面が出てきます。
これは会社によって、そして荷主さんによって、大きく違います。荷主さんとの関係については別の記事にも書きましたが、面接では見えない部分です。
最初の1ヶ月は、どうだったか
「しんどいことはなかったが、覚えることは多かった」
体力的にしんどいことは、特になかったそうです。
ただし、覚えることは たくさんありました。
- 道
- ルート
- 積み込みの仕方
- フォークリフトの操作
「でも、慣れてしまえば何の問題もありません」
未経験で入る方は、ここを覚えておいてください。
最初の壁は体力ではなく、覚える量です。そして それは、慣れれば消えます。3ヶ月の壁と言われるのは、たぶんここです。
フォークリフトについては、資格の話にまとめてあります。
工場とトラック、5つで比べてもらいました
本人の言葉を、そのまま表にします。
| 自動車工場 | トラック(今の仕事) | |
|---|---|---|
| 体のきつさ | 問題なかった | 同じコースなので、きつくない。ただし繁忙期は荷物が増えてしんどい日も |
| 気持ちのきつさ | 単純作業がずっと続く。時間が長く感じる | 一人なのでかなり気楽 |
| 収入 | 工場のほうが全然良かった | 下がった |
| 自由さ | — | 好きなところで休憩できる。早く帰りたい日は休憩を取らずに帰ることも |
| 生活リズム | 夜勤と昼勤があり、リズムを取るのが大変 | 一定 |
収入だけは、はっきり工場の勝ちです。本人がそう言っています。
それ以外の4つが、トラックに寄っている。この差が「もう辞められない」につながっています。
「もう辞められない」の意味
本人の言葉を、なるべくそのまま載せます。
「早く終わらせれば早く帰れる。自分の考えたルートで回れる」
「私のコースはやり切りなので、早く配送を終わらせてしまえば、早く終わることができます。」
「なおかつ、自分のペースで、自分の考えたルートで回ることができるので、とてもやりやすく思っております」
「運送会社全般に言えるのが、やはり一人でやれるのが かなり気楽な部分があり、自分のペースで淡々と仕事ができる。それが理由の一つになります」
まとめると、こういうことだと思います。
「辞められない」理由は、お金ではありませんでした
- 早く終われば、早く帰れる
- ルートを自分で考えられる
- 休憩を自分で決められる
- 一人で、誰にも見られずに働ける
収入は下がった。でも、時間と裁量が増えた。その交換に、本人は満足しているということです。
ただし、本人が自分で釘を刺しています
ここを書かないと、この記事は宣伝になります。
「どこの会社にも当てはまるとは思いません」
「もう辞められません」の話をする前に、本人が自分でこう前置きしました。
そして、こうも言っています。
「どこの会社も似たような給料だと思いますが、やはり仕事内容が良ければいいのですが、悪いと結構しんどいことになるかもしれません」
ここが一番 大事です。
この人が満足しているのは、「トラックドライバーだから」ではなく「このコースだから」です。
だから、面接ではここを聞いてください
- 「私が担当するコースは、どういう流れですか?」
- 「やり切りですか、それとも時間で拘束されますか?」
- 「1日に何件くらい回りますか?」
- 「定時は何時間で、実際は何時間くらいで終わっていますか?」
「会社が良いか」より「そのコースが良いか」です。同じ会社でも、コースが変われば別の仕事になります。
向いていない人
本人に聞いたら、はっきり答えが返ってきました。
「運転が苦にならない方のほうがいいです」
「荷物を運ぶのが仕事ですが、やはり一人で運転をすることになるので、ここは大事かなと思います」
当たり前のようですが、これは本質だと思います。
「一人が気楽」と感じる人には天職になります。逆に一人が苦手な人には、同じ条件がきつさになります。
そして、同じ道を通る人へのアドバイス
「言われてるほど、悪い業界ではないかなと思っております」
「特に昨今、いろいろ整備もされてきていますので、働き方だったり、ドライバー目線で考えてくれる会社も とても多くなっていると思います」
入る前は「きつい・汚い・安い・拘束時間が長い」というイメージを持っていた人が、入ったあとにこう言っています。
私は同業なので、この言葉を自分では書けません。だから、本人の言葉のまま置いておきます。
雇っている側から、正直に
最後に、私からも一言だけ書いておきます。
この記事の読み方について
- 私はこの人を雇っている側です。気を遣って良く言ってくれた可能性はあります
- ただし「収入は工場のほうが全然良かった」とはっきり言われました
- 荷主さんとの付き合いについても、困っていると言われました
- だから、全部を良く言ってくれたわけではないと思っています
都合の悪いことを言ってもらえたので、この記事を書きました。そうでなければ、載せていません。
まとめ
異業種から来た人に聞いて分かったこと
- 収入は、はっきり工場のほうが良かった
- それでも「もう辞められない」と言う
- 工場を辞めた理由は、単純作業と「止まると無給」
- トラックを選んだ理由は「すぐに働けたから」
- 一番の想定外は拘束時間が短かったこと(定時9時間、実際7〜8時間の日も)
- 理由は「やり切り」の仕事だから。早く終われば早く帰れる
- 困っているのは荷主さんとの付き合い。言うことを聞かざるを得ない部分がある
- 最初の壁は体力ではなく覚える量(道・ルート・積み込み・リフト)
- 「辞められない」理由は、一人で自分のペースで働ける自由
- ただし本人が「どこの会社にも当てはまるとは思わない」と釘を刺しています
収入が下がっても続けられる仕事がある。それは、お金以外のところに何かがあるということです。
この人の場合は、時間と、自分で決められることでした。
それが自分にとっても価値のあるものかどうか。そこだけは、入る前に考えてみてください。