10代でトラック運転手になった社員に聞きました|友達からは「もっと歳をとってからでいい」と言われました
※本人の同意を得て掲載しています。氏名・年齢・学校名・地名は記載していません。1人の体験であり、会社や地域によって条件は大きく異なります。
地方でトラック運送会社を経営しています。ドライバーを20名ほど雇っています。
うちに、10代でこの仕事に入った社員がいます。
私はこのサイトで、若い人が運送業に来ない理由を2つ書いていました。免許制度と、悪いイメージです。
今回、本人に直接聞きました。そして、どちらも当たっていませんでした。
先に、一番大事なところを書きます
「運送は、もっと歳をとってからでもいいんじゃない」
入る前、友達に言われた言葉です。
反対されたわけではありません。「やめとけ」でもありません。
今やる仕事ではない、と言われたということです。
私は「きつそう」「汚れそう」というイメージが若い人を遠ざけている、と考えていました。
でも、この方の周りが言っていたのは、それとは違いました。
周りは、何と言ったか
「運送は最後の砦みたいな感じで言われました」
周りの友人は、現場系の仕事が多いそうです。
「かなりの重労働」だと本人は言っていました。そのうえで出てきたのが、この言葉です。
最後の砦。つまり、他がだめだったときに行くところだと思われている、ということです。
ここは、よく読むとおかしな話です。きつさで言えば、周りの現場仕事のほうが重労働だと本人は言っています。それでも運送は後回しにされている。
きつさの順番ではありません。選ぶ順番の問題です。
入る前、どんなイメージを持っていたか
ここが、一番聞きたかったところです。私が書いた内容が当たっているかどうかを、確かめたかったからです。
「免許も持っていなくて、興味もなかったので、イメージがなかった」
悪いイメージを持っていた、ではありません。
そもそも、何のイメージもなかったそうです。
私はトラック運転手はきついのかという記事に、「きつそう」「汚れそう」「休みがなさそう」という悪いイメージが先行している、と書きました。業界の側にも、それを変えきれていない責任があるとも書きました。
実際に入ってきた社員に聞いたら、変えるべきイメージすら、持たれていませんでした。
悪く思われているより、こちらのほうが厄介だと思います。知られていないものは、選びようがありません。
では、なぜこの仕事を選んだのか
家族が運送の仕事をしていて、勧められました
選んだ理由は、これでした。
自分で調べて選んだわけでも、求人を見て決めたわけでもありません。
正直に書きます。身近に運送の仕事をしている人がいなければ、この方はこの業界に来ていません。
興味がなく、イメージもなく、免許も持っていなかった。入口は、身内の一言だけでした。
逆に言えば、それ以外の入口が働いていないということです。求人票も、業界のPRも、この方には届いていませんでした。
ここまで読んで、「実際の求人はどうなっているんだろう」と思われたら
先に求人を1つ2つ見ておくと、この続きが具体的に読めます。
免許は、どうしたのか
ここが、この記事で一番確かめたかったところです。
入る前に、合宿で取りました
会社に入ってから取ったのではありません。先に取っています。
費用は、家族に出してもらいました
自分で払ったわけではない、ということです。
「無理かも」と思ったことは、特にありません
免許のことで壁を感じたかどうかも聞きました。答えは短いものでした。
私は「免許制度が若い人の入口を狭くしている」と書いていました。2017年3月12日以降に普通免許を取った方は、車両総重量3.5トン未満までしか運転できません。これは制度として事実です。
ただ、この方は壁だと感じていませんでした。
そして、費用を出したのは本人ではありません。
この2つは、セットで読む必要があると思います。制度の話として語ってきましたが、実際にそこを越えられるかどうかは、お金を誰が用意できるかにかかっている。少なくともこの方の場合は、そうでした。
免許の種類と費用は未経験からトラック運転手になるにはにまとめました。取得費用を会社が負担する制度を持っているところもあります。
入って最初に「きついな」と思ったこと
「朝が早いのが、慣れるまできついです」
最初にきついと思ったことを聞きました。
荷物でも、運転でも、人間関係でもありませんでした。
正直に言うと、積み降ろしがきついという答えを予想していました。うちは基本、手積み手降ろしです。
でも、最初に挙がったのは朝の早さでした。しかも「慣れるまで」と言っています。
想像と違ったこと
「どこの納品先でも、可愛がってくれます」
良い方向で違ったことです。
「自分が若いせいか」と、本人は理由を付けていました。
ただし、本人はこう付け足しています
「ただ元気に挨拶はしますので、この子はいいドライバーだと思われてるかも」
若いから可愛がられている、で終わっていませんでした。
ここは、雇っている側から補足します。
荷主先で嫌われるドライバーの話は別の記事に書きました。挨拶をしない、態度が悪い。それだけで「あの人はもう来させないで」と言われます。
若いことは、それだけでは有利になりません。若くて、挨拶ができる。この2つが揃っているから可愛がられています。
同年代の友達と比べて、どうか
この質問は、この方にしか答えられません。40代・50代の転職とは、比べる相手がまったく違うからです。
給料は、現場仕事のほうがいい
周りの友人は現場系の仕事が多く、朝が早いのは同じだそうです。
そのうえで「給料は現場の方がいいみたいです」と言っています。
休みと自由な時間は、運送のほうがいい
「休みなど自由時間は運送の方がいいです」
給料では負けている。この答えを、そのまま載せます。
うちの年間休日は約104日です。休みの実態は数字をそのまま出しました。運送業の平均とほぼ同じで、全産業の平均よりは少ない数字です。
その数字でも、同年代の現場仕事と比べれば休みは多い。それが本人の実感でした。
同じくらいの年で迷っている人へ
「若いだけで可愛がられると思うので、居心地はいいですよ」
「業界自体、かなり年齢が高い人ばかりなので」
自分は運転が好きだということも、理由に挙げていました。
「元気に挨拶できれば、上手くやれる仕事だよ」
同じ年代の人に何と言うか、という質問への答えです。
「一人の時間が長いのもいいです」
これも、良いところとして自分から挙げました。
3つとも、求人票には書いていないことです。
特に最後の「一人の時間が長い」は、工場から来た方も同じことを言っていました。営業所を出れば一人になれる。年代の違う2人が、同じところを挙げました。
向いていないと思う人
「運転が嫌いとか、体を使うのが嫌な人は無理だと思います」
向き不向きも、正直に聞きました。
第1弾、第2弾でも同じ答えが返ってきています。派遣から社員になった方も、挙げたのはこの2つでした。
3人とも、ここだけは揃っています。これは、会社を選べば変わる話ではありません。
この先、どうしていきたいか
「まずはこの会社で、色々経験していきたいです」
「まだ先のことは考えてません」
大型免許を取りたい、とは言いませんでした。10代です。それでいいと思います。
雇っている側から、正直に
私が書いていたことは、当たっていませんでした
聞き取りをしたのは、この方を雇っている私です。会社に都合の悪いことは言いにくかったはずです。そこは差し引いて読んでください。
そのうえで、私が別の記事に書いた「若い人が来ない理由」は、この方には当てはまりませんでした。
免許は壁になっていない。悪いイメージも持たれていない。持たれていたのは、無関心でした。
該当する記事は直します。経営者として見えているものと、実際に入ってくる人が見ているものは、違いました。
若い人が来ないのは、嫌われているからではありませんでした
10代で入った社員に聞いて分かったこと
- 入る前、この仕事にイメージを持っていなかった。免許もなく、興味もなかった
- 友人からは「運送はもっと歳をとってからでもいいんじゃない」と言われた
- 周りの友人は現場系の仕事が多く、そちらのほうが重労働だと言われている
- それでも運送は「最後の砦」。他がだめだったときに行くところだと思われている
- 入るきっかけは、家族が運送の仕事をしていたこと
- 免許は入る前に合宿で取得。費用は家族が出した。「無理かも」と思ったことはない
- 最初にきついと思ったのは、朝の早さ。ただし「慣れるまで」
- どこの納品先でも可愛がられる。ただし本人は元気に挨拶をしている
- 給料は同年代の現場仕事のほうがいい。休みと自由な時間は運送のほうがいい
- 向いていないのは、運転が嫌いな人と、体を使うのが嫌な人
- 「まずはこの会社で、色々経験していきたい」
この仕事は「きつそうだから避けられている」と思っていました。
実際は、避けられてすらいませんでした。
候補に入っていないものは、条件を良くしても届きません。ここが、雇う側として一番こたえたところです。